盲導犬は、たくさんの方々の愛に支えられて
一生をおくります。
目で見える形よりも、
むしろ目には見えない『ぬくもり』で
支えられているように感じています。

盲導犬を育成するために、たくさんのボランティアさんが協力してくださっています。
訓練所の犬舎のお掃除ボランティアさんや、盲導犬の毛抜け防止用の洋服を縫ってくださるボランティアさんなど陰で、支えてくださる方々も、多数いらっしゃいます。

色んな場所で、盲導犬育成の募金箱を見かけ、そっとお気持ちを届けてくださる方、チャリティーグッズをご購入くださる方、財団や企業さんや、獣医さんなどの支えも、大きな支えとなっています。

繁殖犬のお父さん、お母さん、その犬を預かり育ててくださるボランティアさんが在ってこそ、盲導犬候補犬たちが産まれます。

盲導犬に向く犬が産まれるように、元気な犬が産まれるように手助けするのは、とても大変な事だと聞いています。

しばらくの授乳期間後、子犬たちは訓練所にもどり、約1年間、パピーウォーカーさんのところで愛情深く育てていただきます。兄弟姉妹たちは、訓練所のパピーウォーカーさんの勉強会などで再会して、ドッグランで走り回ったりもします。

パピーウォーカーさんは、パピー担当の訓練士さんの指導のもと、基本的な犬のしつけや、健康管理、そして何よりも、愛情豊かに育ててくださいます。この期間に、盲導犬候補犬たちは、人間へのゆるぎない信頼を築きます。

約1年で訓練所に戻った盲導犬候補犬たちは、何度かの見極めテストで、盲導犬に向く犬、向かない犬に分けられます。盲導犬に向かない犬は、リジェクト犬ボランディアさんのところで、ペット犬として暮らしたり、中には麻薬探知犬などに向く犬として、別のお仕事をする犬もいます。

盲導犬に向く犬は、盲導犬訓練士の指導で
盲導犬のお仕事を覚えてゆきます。

盲導犬の主なお仕事は、
●道の左端を歩く
●道の角(コーナー)を教える
●段差を教える
●障害物を回避する
ですが、『待つこと』も、とても大事な要素だと
感じています。
通院や通勤、コンサートや映画、レストランなど、静かに待つこと、時には、検査室や手術室、プールやジムなど、しばらくユーザーと離れた場所に待機する必要がある場合もあります。

点字ブロック上の自転車や、店頭に置いてある箱など
歩く目線に近いところの、障害物の回避は、上手に回避
できますが、木の枝やトラックのミラーなど、かなり目線が上のものは、集中していないとわかりずらいようです。
盲導犬の仕事中に、『触らないですね。』とお願いするのは
ユーザーは、ハーネスのハンドルの動きで情報をキャッチしています。触られたり、声をかけられると、犬がそちらを向いて動きが変わります。
見えないユーザーは、びっくりして危険なことがあります。

盲導犬候補犬は、約6ヶ月訓練を受け、その後盲導犬を希望する視覚障害者と、共同訓練をします。初めて盲導犬と歩く人は、4週間、2頭目の盲導犬を希望している人は、3週間、3頭目以上の希望者は、2週間、訓練施設に泊まり込みで共同訓練wするのが基本です。

共同訓練では、お店に入って犬をテーブル下に待機させる、電車やバスに乗る、エスカレーターやエレベーターに乗る、スーパーで買い物をするなど、さまざまな訓練をします。2頭目、3頭目の希望者も共同訓練が必要なのは、新しい犬と慣れることが一番ですが、人も歩き方の癖があり、それを修正する、訓練方法なども、バージョンアップしているなどがあるからです。

盲導犬希望者との共同訓練が終了すると、候補犬卒業。
盲導犬として、デビューします。
盲導犬になったとはいえ、まだ信頼しきっていないユーザーの住む、知らない街で生活を始めます。
気持ちは、とても不安定で、緊張しています。

盲導犬歩行希望者は、卒業と同時に訓練所から、『盲導犬使用者証』を発行してもらい、盲導犬ユーザーになります。
卒業は始まりで、盲導犬ユーザーと盲導犬のペアは
若葉マークのユニットとして、実社会で生活を始めます。
この時点では、お互いがまだまだ手探り状態で、色んな経験を積みながら、パートナーシップを築いてゆきます。

通勤や通学、買い物など、お互いに経験を重ねながら
信頼関係を構築してゆきます。ときどき迷う事があっても
ひとりではないので、こころ強くも感じます。多くの人に
あたたかい目で見守っていただけると嬉しいです。

役所や銀行など、何かの手続きにも、盲導犬と一緒に行きます。盲導犬は、テーブルの下やユーザーの横などに伏せて、静かに待ちます。

旅行やイベントなど、行きなれていない駅や会場では
サポートをお願いして、盲導犬と出かけます。
盲導犬も、張り切っています。

ショッピングの途中、カフェに寄るのが好きだけれど
盲導犬も気持ちよく受け入れてもらえるか、ちょっと緊張します。 「また来てね。」と言ってもらえると、とても嬉しいです。

多くの盲導犬は、2歳前後で盲導犬デビューし、盲導犬ユーザーと共に、よろこびや楽しさ、かなしい事や困った事も経験しながら歳を重ねます。
健康状態にもよりますが、ほぼ10歳から12歳くらいに、盲導犬を引退します。
引退犬ボランティアさんの元で、のんびりと余生を過ごす犬がほとんどですが、中にはパピーウォーカーさんの所に戻る犬もいます。

「盲導犬は、かわいそうだ。」と、いう考えがあります。
私は、縁あって一緒に暮らした、暮らしている3頭の盲導犬に「カンタスは、ハンソンは、ガイアは、盲導犬で、楽しいね。」と言っています。盲導犬だからこそ、の経験がたくさんあります。
たくさんの愛のバトンとつながり、人だけではなく、犬にとっても、幸多き犬生であることを、こころから願っています。